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うまくいかない1on1に足りないのは「関係性の時間軸」の視点

2020年3月20日

職場のメンタルヘルスを考えるうえでも、上司と部下のコミュニケーションは大事です。

講演依頼やコンサル依頼のなかで、「1on1を導入しているのですが、うまくいってないんです」という相談を受けることは少なくありません。

上司の側もどうしたらいいかわからない。

部下からしたら進捗管理の場が増えただけのようで苦痛、といった具合です。

本来、1on1は「上司と部下が隔週~1ヶ月に1回30分ほどの面談を行って、業務の振り返りや相談をする場」として導入されています。

これまでは半期に1度のMBO面談だけだったところから、こまめに振り返りと目標設定の見直しができる、そんな機会といえます。

企業によって「なんのために導入したか」という目的はさまざまですが、「部下の成長」が掲げられているところが多いように思います。

場としては良さそうなのに、なぜ活かしきれていないのか。

私はその理由は「関係性の時間軸」が欠けていることにあると考えています。

多くの企業で導入時には「こんなやり方で進めましょう」というガイドが示され、研修の機会があります。

最初は、こんなアイスブレイクから始めて、こんな質問をしましょう、といった具合に。

けれど、「うちの課に配属されたばかりの部下」と「2年間一緒に働いている部下」に同じ進め方をして、うまくいくでしょうか。

私としての答えは、NOです。

1on1を始めたばかりの場では、いきなり成長支援のための話題をふるのではなく、まず第一段階として「一緒に成長を目指す協働的な関係をつくる」ところから始めるのが重要だと思います。

「成長」につながるための場づくりには、この「関係性」が欠かせません。

皆さんは、自分の経験を振り返ってみて「成長できた」と感じられたのはどんなときでしょうか。

ハッピーな経験だけでなく、「失敗した経験」、「自分の能力の限界に気づいた経験」、「挫折経験」も含まれるのではないでしょうか。

ネガティブな経験への直面化と振り返りこそが、「成長の糧」なのです。

ネガティブな経験に向き合うのは誰だってつらいし、苦しい。

そこを一緒に乗り越えるために必要なのが、一緒に自分の成長を目指してくれる存在なのです。

「自分の上司は、自分の成長を本気で支援してくれている」と心から思える協働的な関係づくりができてこそ、成長に向けての1on1は機能し始めるのです。

次に、第二段階として、業務の振り返りを聴いて、事実ベースでフィードバックすることで、成長支援へとつなげます。

当然、失敗や能力不足など、フィードバックしなければならない「痛い事実」があるでしょう。

でも大丈夫。

協働的な関係がベースにあれば、上司と部下で一緒に向き合っていけるはず。

その先にようやく「自発的に面談も成長も進んでいく」段階が訪れるのです。